C-ラボ市場調査2016「納豆」

福島第一原発事故から5年が経過し、C-ラボで測定される食品からの放射性セシウムの検出事例(基準値を下回り、検出下限値以上の値で数値化されたもの)は、年間を通してもいくつかと数えられるくらい少なくなってきています。しかし、明治生まれの物理学者寺田寅彦の言葉とされる“天災は忘れた頃にやって来る”に習えば、“忘れた頃に放射性セシウムがやってくる”ことは、たとえ善意であってもあり得ることです。そこで、これまでも何度か取り組んだ市場調査を今年もやろうということになりました。これまで、2011年から12年にかけては様々な食品について、2013年はキノコについてほぼ独自調査として実施し、2014年は全国の市民放射能測定所(現在30カ所)が参画するウエブ上のデータ検索サイト「みんなのデータサイト」のシイタケ・タケノコ測定プロジェクト企画に参加する形で実施しました。2016年の今年は何に取り組もうか、ということで、まずはこれまでの食品別検出状況をC-ラボの測定結果や厚生労働省の発表資料等を参考にして決めました。図1は厚生労働省の資料ですが、野生の動物や山菜・キノコ、次いで水産物に検出値が高い傾向にあります。そして、次いで、大豆です。大豆は、納豆・豆腐・味噌として、食卓にはなくてはならない食材の原材料だということで、今回は納豆にしました。測定ボランティアの皆さんが、日頃出入りするスーパー等で購入して測定容器に細密充填し、測定しました。個別の測定結果は、すでにC-ラボホームページに掲載しておりますが、以下はそれらのまとめを記します。

 

市場調査品目と件数:納豆、8検体
試料採取期間:2016年3月末から7月末
大豆産地:国産7件、アメリカまたはカナダ1件
納豆製造地(記載のない場合は販売会社所在地):
愛知県・栃木県各2件、茨城県・東京都・宮崎県・和歌山県各1件
購入場所:東京都内3件(全てオーケー青物横町店)、名古屋市内5件(アオキスーパー 千代が丘店、スギ薬局猪高店、バロー光音寺店、西友御器所店、タチヤ 八事店 各1件)
測定器:日立アロカメデイカルCAN-OSP-NAI(NaIシンチレーション検出器核種分析装置)
試料重量:0.41-0.51 kg(容量で500 mL)
測定時間:1085-1440分
測定結果:放射性セシウムはすべて検出下限値未満
検出下限値:セシウム-137は1.3-1.8 Bq/kg、セシウム-134は1.4-2.0 Bq/kg、したがって、両核種の合計値である放射性セシウムについては2.7-3.8 Bq/kg。

ここで、事故時にセシウム-137(半減期30.1年)とセシウム-134(半減期2.06年)は1:1比で放出されましたが、半減期の短いセシウム-134は減衰が早く、5年目の4月には1:0.20比となっています。そこで、セシウム-137が検出下限値1.8 Bq/kg未満であれば、セシウム-134は1.8*0.2≑0.4 Bq/kg未満となり、計測上の下限値よりも低い下限値であるといえます。したがって、放射性セシウムの実質的な検出下限値は最大でも2.2 Bq/kgとなり、結果として、全ての納豆検体で2.2 Bq/kg 未満であったことが確認できました。

C-ラボでは、検出器の周りの遮蔽や温度管理等に注意を払って、出来る限りバックグラウンドの低い状態を保ってNaI検出器の性能の限界に挑戦しながら、測定を続けています。その上で、検出下限値の低減化のためには、試料量が多いこと、測定時間が長いことが有効です。ただ、測定器毎に測定容器の形状が決まっていますので、自ずと試料量も決まってしまいます。C-ラボでは、測定容器は0.5 Lと1.0 Lの2種類で試料量に反比例して、また、測定時間が長いほどその平方根に反比例して、検出下限値が低くなります。今回の納豆については、何しろ包装によっては12パック分必要となりますが、測定容器は0.5 Lと決め、可能な限り長時間(最長1440分)測定を行いました。検体数は8検体と少ないですが、検出下限値の限界まで測定し、放射性セシウムが全て2.2 Bq/kg 未満であったことを確認いたしました。

(文責 大沼章子)

%e7%b4%8d%e8%b1%86%e5%9b%b31

%e7%b4%8d%e8%b1%86%e5%9b%b32
図2 測定された納豆・・・全て検出限界値未満

広告