福島事故による疾病を否定するいくつかのニュース、論稿

訳者注:福島事故とくに放射能に起因する疾病、甲状腺ガンについては日本政府も国連報告なども関係を否定するながれにある。こうした報告についての情報をいくつか集め、またこれを批判する論稿をあわせて掲載する。議論の参考にしていただきたい。

福島の放射能放出が原因の死者,疾病は5年後もまったくなかったBy Michael W. Chapman | May 11, 2016 | CNSNews.com

  1. 5 Years Later, Deaths Caused by Radiation Leak at Fukushima: 0

http://www.cnsnews.com/news/article/michael-w-chapman/5-years-later-number-deaths-caused-fukushima-nuclear-radiation-leak-0

世界原子力協会*の最新情報は福島の事故について「原子力事故が直接原因の死者もしくは放射能による疾病はまったくなかった」とのべている。またCNSNews.com**に対する5月11日のメールで、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の広報担当ジャヤ・モハン氏は、「福島第一原発に於ける事故後、放射能被曝による直接の死者はない」と報告した。この結論は2015年8月のIAEAの報告やUNSCEARの2013年 における確認と将来予測に一致する。

*世界原子力協会:原子力発電を推進し、原子力産業を支援する世界的な業界団体で、本部はロンドン

**CNSnews:政治的に保守的な米国のニュースおよび解説サイト wikipediaによる

福島に於いてこの4年間に見つかった子どもの甲状腺がんの高い有病率は集団スクリーニング*に起因するものだ

福島県立医科大学鈴木真一らが、Thyroid誌(米国甲状線学会の機関誌)の 2016年5月10日電子版に発表した論文「Comprehensive Survey Results of Childhood Thyroid Ultrasound Examinations in Fukushima in the First Four Years After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident(福島第一原子力発電所事故直後の4年間に福島で実施された小児甲状腺超音波検診の総合的な調査結果)」の抜粋

方法および結果 2011.4.1現在福島県の18歳以下の367,685人のうち300,476人について超音波検査をした。その内2,108人に再スクリーニングをおこない、内543人にFNAC(窄刺吸引細胞診)をおこない、その内113人が悪性腫瘍と診断または推定された。その結果99人の患者に外科的切除をおこない95例が乳頭状甲状腺ガンだった。福島の子どもの甲状腺ガンの全体の有病率は100,000人当たり37.3で、被曝地域と非被曝地域の間に差はない。甲状腺ガン患者の外部被曝線量は最初の4ヶ月間で2.2mSvより低いと推定された。

結論として、福島において4年間に発見された子どもの甲状腺ガンの高い有病率は集団スクリーニングに付随するものといえる。それは他のどこの場所であっても偶発的な数字を明らかに超えている。がん登録をも含めた他のいかなる結果との直接的な比較も,方法論の相違により意味が無い。

*スクリーニング:健康集団の中から無症状あるいは無自覚の有病者を選 び出すための一連の検査で、集団の中からふるい分けるという意味でスクリーニ ング screening と呼ばれている

3)甲状腺ガンの割合は福島近辺の子どもにより高い*

Thyroid Cancer Rates Higher in Kids Near Fukushima Nuke Plant –Study

NBC News** 2015.10.8

http://www.nbcnews.com/storyline/fukushima-anniversary/thyroid-cancer-rates-higher-kids-near-fukushima-nuke-plant-study-n440801?cid=eml_onsite

福島原発のメルトダウン後、近隣に住んでいた子どもが他の地区の子どもの20〜50倍の割合で甲状腺ガンと診断されたとする研究が発表された。著者らの論点はこの地区のみの厳密なモニタリングが原因でより多くの症例が発見されたという政府の立場をひっくり返すものである。

福島に住む37万の子どもの大部分が超音波診断をうけた。最近の統計は8月に公開され、前年から25人増加して137人の甲状腺ガンが推定もしくは確定された。他の地区では毎年100万人の子どもについて一人ないし二人がこの病気になる。

「これは予期されたより多く、予期されたより早期におきている」、「通常予期されるものより20倍ないし50倍高率だ」と筆頭著者の津田敏秀はAP通信に語った。

本研究は今週オンラインで発表されたが、バージニア所在の環境疫学国際学会発行のEpidemiology誌11月号(2015)に発表される。

このデータは福島県立医科大学による検査結果である。

放射能とガンの関係の意味付けは当てにならず不確かである。個々のガンのケースを放射能に関係づけることは科学的に不可能である。福島におけるような型にはまった検診で厳密にみると腫瘍の迅速な発見になり、いわゆる「スクリーニング効果」である。

災害の直後、福島に入った指導的な医師、山下俊一は繰り返し放射線が原因の疾病の可能性を認めなかった。甲状腺の検査は政府によって、それが安全とされるよう指示されていた。

しかし、岡山大学教授の津田は「継続的に実施されている超音波検査の最新結果は、それは継続して行われるべきだが、政府の見解についての疑問を高めている」といっている。

子どもの間での甲状腺ガンは、1986年のチェルノブイリの大惨事以後、医学の世界が放射能と決定的に関連づけた疾病である。甲状腺ガンは治療をうければ命にかかわることはまれであり、早期の発見はプラスであるが、患者は生涯にわたって治療を必要とする。

津田の結論について科学者の意見はわかれている。米国ワシントン大学疫学教授 スコット・デービスは同じEpidemiorogy誌で、津田の研究の主たる限界は実際の放射線量を推定するための個々人のデータの欠落であるといっている。

Davis は世界保健機構(WHO)およびUNSCEARの見解には同意した。そのいずれも、福島について見解をだし、予測されたガンの割合は安定しており、放射線に原因するとみられる上昇はない、としている。

コロンビア大学医学センターの放射線生物物理学の教授である、デビッド·ブレナーは異なる見解をもっている。彼は放射線量についての個別の推定が必要であることには同意しているが、電話インタヴューで、福島におけるより高い甲状腺ガンの割合はスクリーニング検査が原因ではなく、それは真実であるといっている。

福島の放射能とがんとの何らかの結びつきについての結論は補償および他の政策を決定する助けになる。政府によって安全とみなされた地区に住んでいた多くの人々は,とくに子どもたちのために病気を恐れて避難している。

原発から約20キロ(12マイル)ほどは帰還困難区域ゾーンにされている。できるだけ多くの人々が帰還できるように、汚染瓦礫や土壌の除染が継続され、その境界は常に再マッピングされている。原発を廃止するには何十年もかかると予想される。 福島県郡山市で看護師として働いていた松本典子(53)は、事故の数か月後、当時11歳の娘を連れて東京に逃げた。彼女は最初不安を感じなかったが、彼女の娘に鼻血や発疹が出始めて心配になった。 「私の娘は、放射線フリーで生きる権利を持っている」と彼女は言った。「私たちは放射線のせいだと言い切れません。しかし、私は個人的には放射線が病気の背後にあると感じます。」 ノースカロライナ大学の疫学部教授のアンドリュー・オルシャンは、大惨事の関連研究は複雑で困難であると指摘した。 「津田博士の研究は、甲状腺への個々の放射線量レベルの評価と過剰な検出に関するスクリーニングの影響評価が不十分な点に限界があった」と彼は言う。 「それにもかかわらず、この研究は、政府の計画として可能性のある健康影響の追加的な調査を開始するためにも、国民意識の向上のためにも、非常に重要である。

*訳者注:やや旧いニュースだが、福島の甲状腺ガンについての論点を比較的公平に論じているので参考まで

**米国NBC傘下のニュース会社 ***津田敏秀:岡山大学大学院環境生命科学研究科 人間生態学講座教授

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