東京に落下した福島からの放射性セシウムはガラス微粒子に濃縮されていた

Radioactive cesium fallout on Tokyo from Fukushima concentrated in glass microparticles

Goldschmidt Conference*より

EurekAlert**2016年6月26日公表

新しい研究は福島の事故後数日間に東京の下町に落ちた放射性降下物の大部分が一種のガラス状煤の形で不溶性のガラス微粒子の中に濃縮されて堆積したことを示した。これは放射性物質の大部分が雨水や流水に溶けなかったこと,おそらく直接水で洗うか物理的に除去するまで環境中にとどまっていることを意味している。この粒子はまた放射性セシウムを濃縮しており、いくつかのケースでは放射性降下物の影響はいまもはっきりしないことを意味している。これらの結果は横浜で開催されたGoldschmidt 地球化学会議で報告された。

2011年3月11日大地震の後に福島第一原発をおそった津波はセシウム134(半減期2年)、セシウム137(半減期30年)を含む大量の放射性物質を放出する原因となった。

九州大学の宇都宮聡***博士をチーフとする日本の地球化学者たちは、福島第一原発から230km離れた地域内で収集した試料を分析した。セシウムは水溶性なので放射性降下物の大部分は雨水によって環境から流されていると当初は考えられていた。しかし,最新の電子顕微鏡と放射線写真技術の組み合わせによる分析は、放射性セシウムの大部分はが実際には原子炉のメルトダウン時に形成されたガラス微粒子に閉じ込められて地上に落ちたことを示した。

この分析はこれらの粒子が主に鉄−亜鉛酸化物のナノ粒子からなり,それはセシウムと一緒に酸化ケイ素のガラスの中に閉じ込められ、福島の原子炉の1号炉およびまたは3号炉の中の一次容器の中で溶けた核燃料とコンクリ−トの反応によって形成されたことを示した。微粒子の中の高いセシウムの含有量の故に単位重量あたりの放射能は4.4×1011Bq/gの高さであり,福島の典型的な土壌セシウム濃度の10~10倍高い。

より詳しい微粒子構造および地球化学分析は、また福島原発事故の間に何が起こったかを明らかにした。放射性セシウムが放出され、浮遊性のセシウムナノ粒子を形成した。核燃料は2200°K以上の温度で、原子炉の圧力容器を溶かし,容器の損傷にいたった。浮遊性のセシウムナノ粒子は鉄−亜鉛ナノ粒子とともに凝縮し、溶融したコンクリートからの気体は二酸化ケイ素ガラスナノ粒子を形成し、それらは拡散された。

宇都宮聡博士によると

「この研究は福島の落下物についての我々の推定のいくつかを変更させる。表層土壌の洗浄および除去からなる除染過程について、それを行うことは正しいことであった。しかし、微粒子中の放射性セシウムの濃度は極端に偏って存在し、集中したレベルであった。放射性降下物は、予想以上に多く(もしくは少なく)濃縮されていた。これは健康影響についての我々の考えを変えるべきだということを意味するかもしれない。フランスNanteのSubatech 研究所のディレクターであり、日本の東海村のASRC/JAEA(日本原子力研究開発機構・先端基礎研究センター)の界面反応場化学研究グループのリーダーBernd Grambow 教授のコメントによると、「ここに提示されたナノサイエンス機器による最先端の観察は非常に重要である。それらは福島の原子炉事故から東京への放射性セシウムの長距離大気中移動のメカニズムについての我々の理解を変えるかもしれない。しかし、それはまた人が吸い込んだセシウム微粒子からの吸入被曝を評価する方法を変えることになるかもしれない。実際、不溶性のセシウム粒子の生物学的半減期は可溶性セシウムの半減期よりもより長くなるかもしれない

*Goldschmidt Conference:総合的な国際地球化学の研究集会、2016年は横浜で6.26~7.1開催

**EurekAlert: 健康、医学、科学,技術に関するオンラインニュース;スポンサーはAAAS(アメリカ科学振興協会)

***宇都宮聡:九州大学理学研究院、理学博士、環境ナノ物質科学,地球環境化学