みんなのデータサイト東日本土壌プロジェクト

C-ラボは「みんなのデータサイト」東日本土壌プロジェクトに参加、協力しています。
参加、協力頂ける方はCラボまでお問い合わせください。
Cラボでは、土壌採取動画を制作しました。土壌サンプル採取の際はご参考ください。

みんなのデータサイトによる土壌放射能汚染調査
「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」の目的と意義

 大沼淳一(Cラボ)
(2015年7月3日)

1. 子どもたちが遊び、学ぶ場所の土壌汚染を調べる

福島原発事故から4年半、事故で撒き散らされた放射能は、主として東日本を過酷に汚染しました。政府が行った各種土壌汚染調査結果はありますが、身近な空間で「わが子」が遊び、学ぶ場所が安全かどうかを知るための汚染マップがありません。そこで、全国30数箇所の市民放射能測定所がつくるネットワーク「みんなのデータサイト」の一斉調査として、今回のプロジェクトが企画されました。東日本17都県の公園、広場、校庭、園庭、自宅の庭など身近な場所を、そこで暮らす市民自身がサンプリングして、市民測定所で測定します。メッシュ地図による調査ではとらえられない場所の汚染調査です。

2. 統一された方法によるサンプリング

土壌放射能汚染に関しては、すでに多くのデータが各地に蓄積しています。しかし、それらをそのまま数値の大小を比較することはできません。環境調査で最も大切なのは、サンプリングです。サンプリング方法が違えば、数値は変わります。
今回の調査は、統一されたサンプリング方法によって採取・測定されたデータをマップ化しますから、東日本17都県のすべての地点間の相互比較が出来ます。サンプリング土層の深さ(0-5cm層)、正確な直方体状土壌の採取方法、場所の選択、位置の選択、水分含量、土質、サンプル調整、日時などについて手法、手順などが標準化されています。また、サンプリング方法を徹底するために、各地で講習会を開催します。
ですから、過去に調査を行っている地域でも、是非今回の調査に参加してください。

3. 参加する市民放射能測定所は基準玄米による精度管理をしています

市民測定所の放射能測定器は様々です。測定環境(バックグラウンドなど)も違います。測定スタッフのスキルも様々です。そのために、ゲルマニウム半導体核種分析装置で値付けされた基準玄米を用いて、En数検定という統計手法による精度検定を行っています。

4. 減衰補正計算によって調査開始日に遡ったデータで相互比較

Cs137およびCs134の減衰補正計算を行い、調査開始日に遡って、全ての調査地点のデータが相互比較できるようにします。

5. 特異点の調査

今回の一斉調査では、雨水の吐出口付近の土や溝の底のヘドロなどを調査対象にしていません。しかし、これらの特異点では他の地点の数倍から10倍超といった高い汚染があることが良く知られています。これらの地点を把握して除染することは極めて重要です。したがって、これらの特異点を同時にサンプリングして測定することはかまいません。マップ化する時に特異点を外してマップ化しますが、あわせて特異点の情報が把握されていれば、対行政交渉の時などに有用な情報として活用できると思います。

6. 岩手全県土壌放射能調査結果からわかったこと

最後に、Cラボが岩手の市民グループ「放射線被曝から子どもを守る会・岩手」と協働して、2012年6月からほぼ1年がかりで行った全県316地点土壌調査から分かったことを要約して述べます。

1) 土壌調査で大切なこと
316地点における土壌中放射能濃度を比較するためには、サンプリング方法が統一されている必要があります。サンプリングに参加する多数の市民に、このことを理解していただくために座学と実習の現地講習会を各地で開催しました。例えば、深さ5センチの弁当箱状の土壌をきちんと採取していただくためには、なぜそうするのかをていねいに説明しなければなりません。
また、放射能は核種ごとの半減期に従って減衰します。よって、測定結果を調査開始の日2012年6月1日に遡って補正計算をしました。これによって316地点の相互比較が出来るようになります。

図1

図1

2) 県南2市2町の汚染は深刻

調査結果を図1に示しました。丸の大きさと赤~白のグラデーションで汚染の程度を示しています。金ヶ崎町で最高値4570Bq/kgが出たのを筆頭に、3000Bq/kg(195000 Bq/m2)以上が3地点、2000~3000Bq/kg(130000~195000 Bq/m2)が8地点、1000~2000Bq/kg(65000~130000 Bq/m2)が41地点、500~1000Bq/kg(32500~65000 Bq/m2)が47地点となり、岩手県が実施した160地点の耕作地土壌汚染調査結果(最高値800Bq/kg)よりもはるかに深刻な汚染が広がっていることが判明しました。
とりわけ、県南地方の汚染は予想以上で、一関市、平泉町、奥州市、金ヶ崎町の2市2町全164調査地点中52地点が1000Bq/kg(65000Bq/ m2)を超えています。Cs-137だけについてチェルノブイリ事故の際の放射能汚染区分(土地)に当てはめてみても、第4区分 放射線管理ゾーン:不必要な被ばくを避けなければならないとされる569~2,846Bq/kg(37000~185000 Bq/m2)に53地点が該当する結果となりました。半減期が長い(30年)核種だけに、被曝を避ける暮らしを100年単位で続ける必要があります。
一方、人口が多くてサンプリング地点が多かった盛岡市では100Bq/kgを下回る地点も多く、比較的安心できる場所が多いことがわかりました。

図2

図2

3) 2011年3月に飛来した放射能プルーム

図2は、盛岡市にある岩手県環境保健研究センターが2011年3月18日から毎日行っていた水盤法による放射性降下物調査結果です。福島原発サイト以北で唯一の貴重なデータです。3月20日にはI-131が7830Bq/m2、放射性セシウムが1320Bq/m2も降りました。3月18日から5月7日までの合計では、I-131が8242 Bq/m2、放射性セシウムが1592Bq/m2になります。
この岩手県環境保健研究センターの所在地に最も近い調査地点である泉屋敷児童公園(盛岡11番地点)の測定値は放射性セシウムが22Bq/kgでした。このことは、当時の観測データのない県南2市2町では大量の放射性降下物が降り注いだことを示しています。単純に金ヶ崎町で測定された最高値4570Bq/kgとの比率をとれば、盛岡市の約210倍もの降下があったと推定されます。つまり、県南2市2町では50日間で約173万Bq/m2のI-131、約33万Bq/m2の放射性セシウムが降下した可能性があることになります。このことは県南2市2町の子どもたち並びに住民が多量のI-131を吸った可能性があることを示しています。よって、岩手県においても少なくとも県南2市2町の被曝当時18歳以下の子供たちの健康調査が早急かつ継続的に行われる必要があります。このことを知事あて要請文として送っていますが、残念ながら岩手県は動いていません。

4)食べてはいけないキノコや山菜
岩手県総務室放射線影響対策担当がまとめた岩手県下で採取された野生キノコの2012年度の総検体数54検体のうち17%にあたる9検体が基準超過(100Bq/kg超)となって出荷停止措置が取られています。最高値は県南2市2町の一つ奥州市のハツタケ3000Bq/kgでした。検出限界(7.6~19Bq/kg)以下となったものは9検体にすぎず、検出率は83%に達しています。
注目すべきは第2位の陸前高田市のアミタケ1900Bq/kgです。私たちの土壌調査結果では、8検体の測定が行われ、47.1~823Bq/kg(平均312Bq/kg)と、内陸部県南地域と比べれば高くはありません。遠野市のヌメリイグチも460Bq/kgでしたが、土壌調査結果では、9検体の測定が行われ、46.1~189.5Bq/kg(平均112Bq/kg)でした。これらのことは、さほど汚染が深刻でないように思われる地域でも野生キノコに関しては深刻な汚染があり、岩手県全県にわたって100Bq/kg超の野生キノコが出る可能性があることを示しています。野生キノコに関する放射能汚染調査を岩手県全域に拡大し、検査検体数をもっと増やして監視にあたるべきです。また、本来なら岩手県は基準超過キノコが採取された地点での土壌調査を行うべきですが、それはやられていません。なお、野生キノコで高い放射能が検出された地域(2市2町に加えて、盛岡市及び北上山地や沿岸域の自治体)では、コシアブラ、ゼンマイ、ワラビ、セリ、タケノコなどの山菜類でも食品基準(100Bq/kg)を超えたために出荷自粛措置が取られています。

図3

バルーンヒストグラム

5) おわりに
以上述べてきたように、市民による統一したサンプリングマニュアルによる土壌調査結果は、政府や自治体などから発表されるデータと組み合わせて、様々な解析をすることが出来、専門家が気が付かなかったような重要なことを掘り起こすことも可能です。
右図は、CラボのWEBサイトに発表した岩手県土壌汚染調査結果です。ひもの長さがベクレル数です。風船をクリックすると、生データや調査地点の写真を見ることが出来ます。今回の調査が終われば、東日本17都県の地図上に風船を揚げることが出来るでしょう。

広告